「親が暮らしていた実家だから、できれば残しておきたい」
そう思う一方で、固定資産税や修繕費、草刈り、遠方からの管理など、現実的な負担が気になっていませんか。
実家には家族の思い出があります。簡単に手放したくないと思うのは自然なことです。
ただし、実家を残すという選択には、建物だけでなく、管理する責任や費用負担も伴います。
最初は「とりあえず残しておこう」と考えていても、数年後に管理が難しくなり、「もっと早く準備しておけばよかった」と感じることもあります。
大切なのは、実家を残すこと自体を避けるのではなく、残した後に困らない仕組みを作ることです。
この記事では、実家を残して後悔しやすい5つの失敗と、それぞれの予防策を整理します。さらに、家族で決めておきたい管理計画についても解説します。
この記事でわかること
- 実家を残して後悔しやすい5つの失敗
- 維持費・管理不足・近隣トラブルを防ぐ方法
- 兄弟や家族で負担を分担するときの注意点
- 実家を残すための管理計画の作り方
- 保有を続けるか見直すかの判断ポイント
結論|実家を残して後悔しないためには準備が必要
実家を残すこと自体は、悪い選択ではありません。
将来、家族の誰かが住む予定がある場合や、帰省先として使う場合など、残しておく理由が明確なら、保有する意味があります。
ただし、実家を残すなら、最初に次の3つを確認しておきましょう。
- 管理する人と方法:誰が、どのように建物や庭を管理するのか
- 費用の見通し:固定資産税・保険・修繕費などを誰が負担するのか
- 将来の使い道:何のために残し、いつ保有方針を見直すのか
この3つが曖昧なまま実家を残すと、家族の誰かに管理や費用の負担が集中したり、建物が傷んだりする可能性があります。
「残したい」という気持ちと、「維持できる」という見通しは別のものです。
だからこそ、残すと決めた後の準備が重要になります。
住田さんの悩み

実家には思い出があるので、できれば残したい気持ちがあります。でも、誰が管理するのか、固定資産税や修繕費を誰が払うのか、遠方から見に行けるのかを考えると不安です。実家を残して、あとから後悔することもあるのでしょうか?
家守さんの整理

実家を残したい気持ちは大切にしてよいと思います。ただ、残すなら管理や費用の負担も引き受けることになります。後悔しやすいのは、何も決めずに保有を続けてしまう場合です。まずは5つの失敗を確認し、どうすれば防げるのかを考えていきましょう。
実家を残して後悔する5つの失敗と対策
実家を残した後に起こりやすい問題を、5つに分けて見ていきましょう。
ここで紹介するのは、実家を保有する場合に想定しておきたい失敗パターンです。すべての家庭で起こるわけではありません。
① 維持費が想像以上にかかった
最初に注意したいのは、お金の問題です。
実家を残す場合、誰も住んでいなくても固定資産税などの負担は続きます。
さらに、次のような費用が発生することがあります。
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料
- 草刈り・庭木の剪定費
- 空き家管理サービスの利用料
- 屋根や外壁、雨漏りなどの修繕費
- 電気・水道の基本料金など
- 実家までの交通費
固定資産税だけを見て「これくらいなら払える」と判断すると、ほかの費用が積み重なったときに負担を感じることがあります。
特に築年数が古い家では、雨漏りや設備の故障など、予想していなかった修繕が必要になる場合もあります。
対策:毎年かかる費用と、将来の修繕に備えるお金を分けて計算する。
まずは納税通知書、保険料、過去の修繕費、草刈りなどの支出を書き出してみましょう。
毎年支払う費用を合計し、それとは別に、今後必要になりそうな修繕費の見積もりを確認します。
例えば、通常の年間支出が18万円、修繕に備える予備費を6万円と設定した場合、年間24万円の資金計画になります。これは説明用の架空の計算例であり、全国平均ではありません。
大切なのは、実際に支払った金額と、将来のために確保しておく金額を混同しないことです。
詳しい年間費用の計算方法はこちらで解説しています。
② 管理できずに建物が傷んでしまった
実家を残しても、定期的に管理できなければ、建物の傷みに気づくのが遅れることがあります。
空き家では、次のような問題が起こる可能性があります。
- 室内の湿気やカビ
- 屋根や外壁の破損
- 雨漏りの発見の遅れ
- 庭木や雑草の繁茂
- 郵便物の滞留
- 窓や出入口の不具合
近くに住んでいれば確認しやすいことでも、実家が遠方にあると、通うだけで時間や交通費がかかります。
最初は定期的に訪問するつもりでも、仕事や家族の事情によって管理が難しくなることがあります。
建物の不具合を長く放置すると、必要な修繕の範囲が広がる可能性もあります。
対策:管理担当者・点検項目・確認する頻度を決める。
例えば、次のようなことを事前に整理します。
- 誰が実家を見に行くのか
- どの程度の頻度で点検するのか
- 庭木や雑草の管理を誰が行うのか
- 破損や雨漏りを発見した場合、誰に連絡するのか
- 自分たちで管理できなくなった場合、どうするのか
なお、屋根に上ったり、傷んだ建物の危険な場所に立ち入ったりして点検する必要はありません。危険を伴う確認や補修は専門業者に相談しましょう。
遠方で管理が難しい場合は、空き家管理サービスを利用する方法もあります。
国土交通省も、空き家を当面保有する場合は適切な管理が不可欠であり、自分での管理が難しければ管理業者などの利用を検討するよう案内しています。
③ 近隣トラブルや行政対応が必要になった
実家を残して空き家にすると、建物そのものの傷みだけでなく、周囲への影響にも注意が必要です。
例えば、次のような問題です。
- 庭木の枝が隣地や道路にはみ出す
- 雑草やごみの放置で衛生状態が悪くなる
- 害虫や害獣が発生する
- 外壁材や屋根材の落下が心配される
- 不法投棄や不法侵入が起きる
- 近隣住民から管理について連絡が入る
こうした問題は、所有者自身が気づかないうちに進むこともあります。
また、管理状態が悪い空き家は、自治体から対応を求められる場合があります。
空家法では、管理不全空家等や特定空家等に対して、自治体が指導や勧告などを行う仕組みがあります。
対象となる空き家について勧告を受けると、土地の固定資産税などを軽減する住宅用地特例が適用されなくなる場合があります。
ただし、空き家になっただけで自動的に固定資産税が6倍になるわけではありません。
対策:建物の安全性だけでなく、隣地や道路への影響も点検する。
庭木の越境、外壁や塀の傷み、ごみの放置などを早めに確認しましょう。
近隣から連絡があったときに対応できるよう、連絡窓口となる家族を決めておくことも有効です。
参考:国土交通省「空家法とは」
④ 兄弟や家族の誰かに負担が集中した
実家を残す場合、家族間の役割分担が曖昧なことも後悔につながります。
特に、実家の近くに住んでいる人に管理の負担が集中することがあります。
例えば、次のような状態です。
- 近くに住む兄弟だけが草刈りに行く
- 一人が固定資産税や修繕費を立て替えている
- 業者との連絡を毎回同じ人が担当している
- 近隣からの苦情対応を一人に任せている
- 実家を残したい人と、実際に管理する人が違う
最初は小さな負担でも、何年も続くと不満が生まれる可能性があります。
また、家族の中で残したいという意見が一致していても、誰が費用を出すかまで決まっているとは限りません。
対策:管理・費用・意思決定の担当を分けて決める。
家族で話し合うときは、次の点を確認しましょう。
- 実際に見回りを担当する人
- 草刈りや清掃を手配する人
- 固定資産税・保険料などを負担する人
- 修繕費が発生したときの相談方法
- 緊急時に連絡を受ける人
家族で合意した内容は、簡単なメモでもよいので残しておくと、後で確認しやすくなります。
なお、家族での役割分担と、法律上の所有権や売却権限は別です。特に共有名義の場合は、所有者の権利関係も確認しておきましょう。
⑤ 結局、数年後に売却することになった
実家を残したものの、数年後に売却を考える場合もあります。
例えば、次のような事情です。
- 将来住む予定だった家族が使わなくなった
- 管理を担当していた人が続けられなくなった
- 大きな修繕費が必要になった
- 家族の生活環境が変わった
- 長期間、利用しない状態が続いた
もちろん、数年後に売却すること自体が失敗というわけではありません。
問題は、使い道も管理計画も決めないまま放置し、その間に建物の状態が悪くなったり、費用だけが積み重なったりすることです。
建物の状態によっては、後から売却しようとしても、片付けや修繕などの負担が大きくなる可能性があります。
対策:実家を残す理由と、保有を見直す時期・条件を決める。
例えば、説明用の取り決めとして次のような方法があります。
- まず1年間は適切に管理し、翌年に家族で再検討する
- 利用予定がなくなったら売却や賃貸を検討する
- 修繕費が大きくなる場合は、保有を続けるか話し合う
- 管理担当者が継続できなくなったら管理方法を見直す
ただし、危険な破損や近隣への影響がある場合は、決めた見直し時期まで待たずに必要な対応を行いましょう。
残すと決めたら、永久に残さなければならないわけではありません。
家族の事情や建物の状態が変われば、方針を見直すことも大切です。
実家を残すなら決めておきたい管理計画
ここまでの5つの失敗を防ぐために、実家を残す場合は簡単な管理計画を作っておきましょう。
難しい書類を用意する必要はありません。まずは、家族で次の5項目を確認することから始められます。
| 項目 | 決めておきたい内容 |
|---|---|
| 管理担当 | 誰が実家を見回り、管理するのか |
| 点検内容 | 庭木・雑草・建物の破損・防犯など、何を確認するのか |
| 費用負担 | 税金・保険・修繕費・管理費を誰が負担するのか |
| 緊急対応 | 破損や近隣からの連絡に誰が対応するのか |
| 見直し時期 | いつ、どのような条件で保有方針を再検討するのか |
例えば、家族の一人が定期的な見回りを担当し、草刈りは業者へ依頼する方法もあります。
また、固定資産税や保険料について、誰が支払い、家族間でどのように負担するのかを決めておけば、後から話し合う際の材料になります。
大切なのは、すべてを家族だけで行うことではありません。
無理なく管理できる方法を決め、続けられなくなった場合の対応まで考えておくことです。
遠方に住んでいるなど、自分たちでの管理が難しい場合は、管理サービスの利用や、売却・賃貸への方針変更も含めて検討しましょう。
▶ 実家の管理ができないときの対処法|現実的な選択肢を整理する
実家を残す判断を見直した方がよいケース
実家を残すと決めた後でも、状況によっては判断を見直す必要があります。
特に、次のような変化が起きた場合です。
- 管理する人がいなくなった:見回りや修繕の手配を続けられない
- 大きな修繕費が必要になった:保有を続けるための費用負担が重くなった
- 利用予定がなくなった:家族の誰も使わないことが明確になった
- 家族の負担が偏っている:管理や支払いを続けることが難しくなった
- 建物の危険性が高まった:老朽化や破損によって安全面の対応が必要になった
こうした場合は、保有を続けるだけでなく、売却や賃貸、必要に応じて解体なども検討対象になります。
ただし、建物の危険な状態を放置してよいわけではありません。保有方針を決める前でも、安全確保や必要な管理は行いましょう。
「残す」と一度決めたことにこだわりすぎず、家族の状況に合わせて見直すことも、実家を適切に扱う方法の一つです。
実家を残す前に確認したいチェックリスト
実家を残すかどうか、あるいは残すと決めた後の準備ができているかを確認しましょう。
- 将来、実家を使う予定や目的が明確になっている
- 管理する人と管理方法が決まっている
- 年間維持費と修繕費の見通しが立っている
- 家族で管理や費用の分担を話し合っている
- 近隣への影響や建物の安全性を確認している
- 保有を見直す時期や条件が決まっている
このチェックリストは、当てはまる数だけで「残すべき」「売るべき」と判定するものではありません。
例えば、管理する人がいない場合は、ほかの条件が整っていても、管理サービスの利用や方針の見直しが必要になることがあります。
反対に、家族で利用予定があり、管理体制と費用負担の見通しが立っているなら、実家を残す選択も十分に考えられます。
まずは、決まっていない項目を一つずつ整理していきましょう。
判断に迷っている方へ
実家を残したい気持ちはあるけれど、管理や費用の負担が心配。
そのような場合、いきなり売却を決める必要はありません。
まずは、現在どの部分で判断が止まっているのかを確認することが大切です。
例えば、次のような点です。
- 残す理由や将来の使い道が明確か
- 誰が管理するのか決まっているか
- 毎年の費用を把握しているか
- 家族で話し合えているか
- 管理が難しくなった場合の選択肢を考えているか
売る・残す・貸すの選択肢全体を比較したい方は、こちらの記事で判断基準を整理できます。
▶ 実家をどうするか迷ったときの判断基準|売る・残す・貸すの考え方
また、「自分の実家について、何を確認できていないのかわからない」という方は、無料の「見落とし発見診断シート」も利用できます。
家の状態、管理、費用、家族の意向など、判断する前に確認したいポイントを整理するためのものです。
実家を残すか迷っている段階でも、売却価格の目安を知っておくと判断材料が増えます。
価格を確認することは、必ず売却するという意味ではありません。
今後の維持費や修繕費、管理の負担と、売却した場合の選択肢を比較するための情報です。
ただし、不動産の査定額は実際に売れる価格を保証するものではなく、査定の依頼後には不動産会社から連絡が入ることもあります。売却も選択肢として考え始めた段階で、必要に応じて確認しましょう。
※連絡方法の希望を記載できる場合でも、希望どおりにならず電話連絡が入ることがあります。
※査定したからといって売る必要は一切ありません
※合わない会社は断ってOKです
実際に物件を保有・運用してきた立場から整理しています。
次に読む記事
実家を残した場合の維持費を具体的に計算したい方は、こちらの記事を参考にしてください。
実家を残すことのメリット・デメリットを比較したい方はこちらです。
▶ 実家を残すメリット・デメリットとは?後悔しないための5つの判断基準
実家が遠方にあるなど、管理できない場合の対処法はこちらで整理しています。
▶ 実家の管理ができないときの対処法|空き家を放置しないための現実的な選択肢
まとめ|実家を残すなら維持できる仕組みを作ろう
実家を残すこと自体は、悪い選択ではありません。
思い出のある家を大切にしたい気持ちも、将来の家族のために残しておきたいという考えも、尊重されるべきものです。
ただし、実家を残して後悔しないためには、管理と費用の現実を確認しておく必要があります。
今回紹介した失敗は、次の5つです。
- 維持費が想像以上にかかった
- 管理できずに建物が傷んでしまった
- 近隣トラブルや行政対応が必要になった
- 兄弟や家族の誰かに負担が集中した
- 結局、数年後に売却することになった
これらの問題を防ぐために大切なのは、残すと決めた後の準備です。
管理する人を決める。年間維持費と修繕費を把握する。家族で負担を分担する。そして、将来の使い道や見直す時期を決めておく。
実家を残すなら、家だけでなく、維持できる仕組みも残すこと。
これが、実家を残して後悔しないために大切な考え方です。
まずは家族で管理計画の5項目を確認し、決まっていないことを一つずつ整理してみましょう。
※連絡方法の希望を記載できる場合でも、希望どおりにならず電話連絡が入ることがあります。
※査定したからといって売る必要は一切ありません
※合わない会社は断ってOKです
実際に物件を保有・運用してきた立場から整理しています。

