実家を兄弟で相続するとどうなる?共有名義の5つのリスクと対処法

実家どうする

「実家を兄弟で相続するなら、2人の共有名義にすれば平等なのでは?」と考えていませんか。

共有名義は、1軒の家を兄弟など複数人で所有する方法です。しかし、持分を分けたからといって、将来の管理や売却の問題まで解決するわけではありません。

  • 自分は売りたいのに、兄弟は残したいと言っている
  • 実家の近くに住む自分だけが草刈りや見回りをしている
  • 兄弟の1人が住んでいるが、ほかの共有者との取り決めがない
  • 次の相続で共有者が増えたら、どうなるのか心配

結論から言うと、兄弟で共有名義にすること自体が悪いわけではありません。ただし、所有する割合だけ決めて、管理・費用・使い方・将来の売却を決めないままにすると、問題が起こりやすくなります。

この記事では、実家を兄弟で共有する5つのリスクと対処法を解説します。これから共有する人だけでなく、すでに共有名義になっている人が取れる行動も整理します。

この記事でわかること

  • 実家を兄弟で共有すると起こり得る5つのリスク
  • 実家全体の売却と、管理・修繕で必要な同意の違い
  • 共有する前に決めたい6つの項目
  • すでに共有している場合の対処法3つ
  • 相続登記の期限と、困ったときの相談先

結論|共有名義は「今の平等」と「将来の負担」を分けて考える

兄弟で実家を共有する場合、注意したいリスクは次の5つです。

  1. 実家全体を売るには、原則として共有者全員の合意が必要
  2. 管理費・固定資産税・修繕費の負担が偏りやすい
  3. 誰が住むか・貸すかで意見が分かれる
  4. 次の相続で共有者が増える可能性がある
  5. 負担や情報共有の不満が、兄弟間の対立につながる

持分が半分ずつなら、所有割合は分かりやすくなります。しかし、「持分が半分」と「管理の手間も半分」「売却の判断も簡単」は同じ意味ではありません。

まず遺産分割前の状態なのか、すでに兄弟の共有名義として登記されているのかを確認し、それぞれの状況に合う方法を考えましょう。

住田さんの悩み

住田さん
住田さん

兄弟仲は悪くありません。だから実家も半分ずつの共有でよいと思っていました。でも、将来どちらかが売りたくなったら、どうなるのでしょうか。管理費も心配です。

家守さんの整理

家守(やもり)
家守(やもり)

共有名義では、実家全体を売るときと、普段の管理をするときで必要な合意が違います。まず5つのリスクを確認しましょう。すでに共有していても、管理ルールを決めたり、共有の解消を検討したりできますよ。

兄弟で相続した実家は、必ず共有名義になるの?

相続人が複数いても、実家をずっと共有名義にする必要があるわけではありません。

遺言などによる特別な指定がない場合、遺産分割が終わる前の相続財産には、相続人による共有関係(遺産共有)が生じます。しかし、その後の遺産分割で、実家を誰が取得するか、売却して分けるかなどを決めることができます。

ここで区別したいのは次の2つです。

状態 意味と確認点
遺産分割が終わっていない 遺産共有の状態。遺言書・相続人・遺産全体を確認し、遺産分割の手続きを考える
遺産分割後に兄弟で共有している 共有名義での所有が続く状態。管理・費用・使用方法・共有解消を具体的に考える

また、「兄弟2人で相続」と思っていても、親の配偶者や代襲相続人など、ほかに相続人がいる場合があります。相続人の範囲や登記の状態が分からない場合は、司法書士などに確認しましょう。

売却・代償分割・共有の3つの分け方を比較したい方は、実家を兄弟で分ける方法3つ|売却・代償分割・共有の違いで詳しく説明しています。

実家を兄弟で共有名義にする5つのリスク

① 実家全体を売るには原則として共有者全員の合意が必要

兄は「管理できないから売りたい」、弟は「思い出があるから残したい」。こうした意見の違いが出ると、実家全体の売却が進まなくなる場合があります。

共有名義の実家全体を売却するには、原則として共有者全員の合意が必要です。兄弟2人の持分が2分の1ずつなら、どちらか一方の希望だけで実家全体を通常どおり売ることはできません。

ただし、自分の共有持分だけを譲渡することは、原則として単独で可能です。実家全体の売却とは別の話であり、持分だけを希望する価格で簡単に売れるとは限りません。第三者が共有者になる可能性にも注意が必要です。

対処法:共有する前に、将来売却を検討する条件、話し合いの時期、意見が割れた場合の相談先を決めておきましょう。すでに共有しているなら、現在の売却意向を全員で確認します。

② 管理費・固定資産税・修繕費の負担が偏りやすい

誰も住んでいなくても、実家には税金や保険、草刈り、見回り、修繕などの負担が生じます。

例えば、近くに住む兄が毎月見回りをして、遠方の弟は何もしていない状態が続くと、登記上の持分が同じでも実際の負担に差が出ます。

民法では、共有物の管理費用などについて、原則として持分に応じて負担することが定められています。一方、固定資産税については共有者間の内部負担だけでなく、市区町村への納税義務の扱いも確認する必要があります。

対処法:税金・保険・修繕費と、草刈り・見回りなどの作業負担を別々に書き出しましょう。立て替えがあれば記録を残し、誰がどの時点で精算するか話し合います。

費用の内訳は、実家の固定資産税と空き家の年間維持費の記事で確認できます。

③ 誰が住むか・貸すかで意見が分かれる

共有名義なのに、兄弟の1人だけが実家を使っている。こうした場合、住んでいない共有者が不公平だと感じることがあります。

民法249条では、共有者は持分に応じて共有物全体を使用できる一方、別段の合意がなければ、持分を超える使用について他の共有者へ対価を負担する仕組みが定められています。ただし、実際の使用権限や支払義務は、当事者の合意や経緯によって判断が異なります。

また、実家を第三者に貸す場合も、契約内容・期間などによって必要な決定方法が変わります。賃貸なら必ず全員一致、あるいは常に過半数でよい、と一律には言えません。

対処法:誰が住むか、使用の条件、費用負担、貸す場合の家賃や修繕の扱いを話し合い、書面に残しましょう。賃貸契約や大きな工事を予定している場合は、締結前に専門家へ確認します。

④ 次の相続で共有者が増える可能性がある

兄弟2人で共有していた実家でも、どちらかが亡くなると、その持分が配偶者や子どもなどへ相続されることがあります。

すると、最初は兄弟2人だった共有関係に、甥・姪など新しい共有者が加わる可能性があります。関係者が増えるほど、全員の意向や連絡先を確認する手間が大きくなることがあります。

さらに、相続登記がされていないと、登記簿から現在の所有関係が分かりにくくなる場合があります。

対処法:現在の所有者と持分を登記事項証明書で確認し、次の相続が起こる前に共有を続ける必要があるか見直しましょう。相続登記の期限にも注意が必要です。

⑤ 管理やお金の不満が兄弟間の対立につながる

共有名義の問題は、金額だけで解決するとは限りません。

  • 親の介護を主に引き受けた人がいる
  • 実家の近くの人だけが見回りや近隣対応をしている
  • 思い出があるから残したい人と、管理が難しい人がいる
  • 売却の話を誰かが一人で進めていると感じる

こうした気持ちの違いがあると、「家を残したいか」だけを話し合っても意見がまとまらないことがあります。

対処法:「残したい理由」「売りたい理由」「今までの負担」「これから引き受けられる負担」を別々に確認しましょう。誰か一人を責める話し合いではなく、共有を続けるための条件を整理することが重要です。

家族間のトラブル全般については、実家の相続トラブルで起こりやすい原因と対策も参考にしてください。

共有名義では何をするにも全員一致が必要?

いいえ。共有物全体の処分と、通常の管理・保存行為では、原則として必要な同意が異なります。

行為の種類 必要な同意の原則
実家全体の売却 共有者全員の合意
形状や効用を著しく変える重要な変更 原則として共有者全員の同意
通常の管理事項 原則として共有持分の価格の過半数で決定
保存行為 各共有者が単独で行える
自分の共有持分だけの譲渡 原則として本人が単独で可能

例えば、兄弟が持分2分の1ずつのときは、一方だけでは「持分の価格の過半数」に達しません。そのため、通常の管理事項でも意見が一致しなければ決められない場面があります。

なお、形状・効用の著しい変更を伴わない変更や、一定の期間内の賃貸借などには特別なルールがあります。また、工事が保存行為・管理・変更のどれに当たるかは内容によって異なります。

「大きな修繕だから必ず全員一致」「賃貸ならいつでも過半数」と機械的に判断しないことが大切です。具体的な工事や契約については専門家に確認してください。

参考:e-Gov法令検索|民法249条〜253条

すでに兄弟で共有名義になっている場合の対処法3つ

すでに共有している場合でも、何もできないわけではありません。現在の名義と兄弟の意向を確認し、次の方法を検討しましょう。

① 管理・費用・使用のルールを書面で整理する

すぐに共有を解消できないなら、まず管理の実態を整理する方法があります。

  • 誰が見回り・草刈り・近隣対応を担当するか
  • 固定資産税・保険・修繕費をどう分担するか
  • 兄弟の誰かが住む場合、使用条件をどうするか
  • 大きな出費の前に誰へ相談するか
  • いつ共有の継続・解消を見直すか

合意した内容をメモに残しておけば、後から確認しやすくなります。ただし、家族間のメモだけですべての法的問題が解消するわけではありません。重要な取り決めは専門家の確認も検討しましょう。

管理担当の決め方は、実家を残すなら誰が管理する?で詳しく扱っています。

② 兄弟の一人が他の共有持分を取得する

実家に住みたい人や、所有を続けたい人がいるなら、その人がほかの共有者の持分を買い取るなどして、所有者をまとめる方法があります。

この場合は、持分の評価、支払い資金、登記費用、税金などを確認する必要があります。持分の売買や贈与と、遺産分割による取得とでは、法律・税金の扱いが変わることがあります。

すでに遺産分割が終わっているのか、まだ遺産共有なのかを確認してから方法を選びましょう。

③ 実家全体の売却や法的な共有解消を検討する

誰も住む予定がなく、管理の負担が大きい場合は、共有者全員で実家を売却することも選択肢です。

ただし、売却価格や分配方法について話し合う必要があります。全員の合意が得られない場合、法律上の共有関係については共有物分割請求などが問題となることもあります。

一方、遺産分割が終わっていない遺産共有では、遺産分割の手続きが適切な場合があります。共有物分割と遺産分割では手続きが異なるため、紛争がある場合は弁護士へ相談してください。

実家を売却して分ける方法、代償分割、共有を比較したい場合は、実家を兄弟で分ける方法3つで確認できます。

共有する前・共有中に決めておきたい6項目

共有を続ける場合は、次の表を家族で確認してみましょう。

確認項目 家族で決めること
① 所有者と持分 誰が何割を所有しているか、登記と一致するか
② 使用方法 誰が住むか、貸すか、使用の条件をどうするか
③ 管理担当 見回り、庭木、郵便物、近隣連絡を誰が担うか
④ 費用負担 税金、保険、修繕費、交通費をどう精算するか
⑤ 意見が割れた場合 誰といつ協議し、まとまらない場合に誰へ相談するか
⑥ 共有の見直し いつ売却・持分取得・利用継続を再検討するか

例えば「半年後に全員で再確認する」など、次の話し合い時期を決めることもできます。これはあくまで家族で検討するための記入例であり、どの家庭にも一律の見直し期限があるわけではありません。

共有名義でも相続登記の期限に注意する

相続登記は2024年4月1日から義務化されています。相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から、原則3年以内に申請が必要です。

2024年4月1日より前に開始した相続でも、未登記の場合には義務化の対象です。2024年4月1日以前に取得を知っていたケースでは、原則として2027年3月31日までの経過措置があります。取得を知った時期によって期限が異なる場合があります。

さらに、遺産分割協議が成立した場合は、成立日から3年以内に、その結果を反映する登記の追加的な義務があります。

相続人申告登記は、基本的な登記申請義務への対応として利用できる場合がありますが、遺産分割成立後の追加的義務まで果たせる制度ではありません。

期限や登記の方法に不安があれば、法務局や司法書士へ確認してください。

参考:法務省|相続登記の申請義務化について

兄弟で共有するか迷っている方へ

共有名義にする前なら、まず相続人と遺言書、現在の名義、兄弟の希望、実家の管理状況を確認しましょう。

今は何を整理すべきか分からない場合は、無料の「見落とし発見診断シート」で実家や空き家の状況を確認する方法もあります。

▶ 無料の見落とし発見診断シートで状況を整理する

実家を売る・残す・貸すの全体の選択肢は、実家をどうするか迷ったときの判断基準で整理しています。

売却も現実的な選択肢となり、価格が家族の判断材料として必要な場合は、不動産会社に相談する方法があります。ただし、査定額は売却価格を保証するものではなく、遺産分割や相続税の評価額と必ずしも一致しません。

通常の一括査定では、不動産会社から電話などで連絡が来ます。サービスの利用条件を確認し、家族の状況に合う段階で検討しましょう。

※連絡方法の希望を記載できる場合でも、希望どおりにならず電話連絡が入ることがあります。
※査定したからといって売る必要は一切ありません
※合わない会社は断ってOKです

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まとめ|兄弟の共有名義は、将来の売却と管理まで考えて決めよう

実家を兄弟で共有するときは、次の5つのリスクに注意が必要です。

  1. 実家全体を売るには原則として全員の合意が必要
  2. 管理費・税金・修繕などの負担が偏りやすい
  3. 誰が住むか・貸すかで意見が分かれる
  4. 次の相続で共有者が増える可能性がある
  5. 管理やお金の不満が兄弟間の対立につながる

共有名義だから必ずトラブルになるわけではありません。大切なのは、持分だけでなく、使用方法・管理・費用・将来の方針まで決めておくことです。

すでに共有している場合は、管理ルールの整理、持分の取得、実家全体の売却などを検討できます。ただし、遺産分割前か後かによって適切な方法が異なる場合があります。

「兄弟だから何とかなる」で終わらせず、今の所有状況と将来の負担を同じ資料で確認すること。それが、実家をめぐる後悔を減らす第一歩です。

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